なぜ…4人の子どもを育て上げた母親が万引き 独立した子どもたちも知らなかった秘密 全てを失ってしまった母親の姿|裁判傍聴
「俺は悪くない」
それからずっと長男は音信不通です。
次男も詳細はわからないと言っていましたが、長男が母親に金をせびるほどに困っていたのはどうもギャンブルが原因のようです。
長男が母親の状況も顧みず頼り切りになっていたのと裏腹に、彼女は誰かに頼るということができないタイプの人でした。
過去の万引きも困窮していたことを誰にも相談できず悩みを抱えこんだ末での犯行でした。
「次男や娘たちにはお金の相談はできませんでした。それぞれの生活もあるし悪いかな、って思って…」
「みんな仕事で忙しいだろうなって思ったし、迷惑をかけたくなくて…」
長男の金の無心に対しては「可哀想だから」と断れず、自分が困っていても「迷惑をかけたくない」と抱え込む彼女は、ある意味ではとても優しい人なのだと思います。その優しさは彼女に罪を犯させました。
万引きはもちろん罪ですが、
「母の状況も知らず、支えてあげられなかったことに後悔しかありません。今まで母から何も相談を受けたことはありません」
このような言葉を子供に言わせてしまうことがもっとも大きな罪だと思えてなりません。(取材・文◎鈴木孔明)
あわせて読む:「お金がない…」を理由に犯罪に走る老人の裁判は毎日のように行われている “明日、死ぬかもしれない”という人々に虚しく響く裁きの声