ホームレス記事はなぜ炎上したのか 取材に欠けていた「当事者性」|久田将義

人にはそれぞれ語れない人生があります。

例えば映画にもなった『ヨコハマメリー』さん。恐らく戦後の米兵相手をしていた女性だと思われます。20年前まで真っ白なおしろいを塗って立っていました。

同じような女性を京都で取材した事があります。立ちんぼの相場のお金を払い、話を聞きました。80歳と言っていました。九州出身の良い家柄で、波乱万丈の人生でした。そして巡り巡って、京都で立ちんぼをしていたのです。話があちこち飛ぶ中、辛抱強く耳を傾け、彼女の半生を聞き取ろうとしました。当事者である彼女に少しでも近づきたかったからです。

ホームレスも同様でしょう。彼らは彼らの人生があり、そこには傾聴すべき「物語」があるはずです。そこの視点が全く抜けている「エッセイ」。これはネット向きの文章だからそのような構成になったのでしょうか。ネット記事の場合、どうしてもcakesのようなテイストの記事がよく読まれる傾向があるのは確かなようです。が、そこに甘んじると炎上し、運営が断り書きを書かざるを得なくなる事もリアルな世界の冷酷な一面なのです。(文◎久田将義)

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