ボクシング歴史的日本人対決を制した井岡一翔選手に暗雲 「テレビ放送でタトゥーをさらしたのでアウト」?|久田将義

僕はかつて、「刺青ボクサー」として名を馳せた大嶋宏成選手にインタビューした事があります。彼は元ヤクザでしたので胸に金魚の刺青を入れていました。ヤクザ仕様のそれです。プロボクサーになるにあたって、胸の刺青だけをお尻などの筋肉を移植してまで消して、プロボクサーになりました。同階級にリック吉村という怪物がいたために日本チャンピオンこそなれませんでしたが、新人王を取り、日本ランキング一位にまでのぼり詰めました。現在は俳優としても活躍しています。

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確かに大嶋選手のようなヤクザ仕様のものなら「問題」かも知れません。だからこそ、彼は皮膚を移植した訳です。が、井岡選手はファッションタトゥーの要素が強く、また範囲も広くありません。まして、ちゃんとファンデーションで隠していました。やれる事はやっていたのです。

JBCは、選手を守りたいのならば汗で流れおちてしまったファンデーションを作ったメーカーに抗議するべきではないでしょうか。恐らく、TBSにも抗議の電話があったのでしょう。デイリー新潮によるとJBCにも「少なからぬファンたちから問い合わせがあったのだとか」という事ですが、本当でしょうか。僕は懐疑的です。抗議は大体、テレビ局に行くと思っていますから。

海外と日本の文化の違いと言ってしまえばそれまでですが、WOWOW開局以来の目玉番組「エキサイトマッチ」(井上尚弥選手のラスベガスデビュー戦を生中継)ではスーパースターたちがタトゥーを入れています。あのフィリピンのヒーローで国会議議員も務めるマニー・パッキャオもそうです。ボクシングに詳しくない人に説明すると、フロイド・メイウェザーJrと世紀の一戦をラスベガスで繰り広げた選手です。

プロ野球選手も海外では、タトゥーが当たり前になってきています。NPBは「タトゥーはダメ」というルールを設定していません。世界スポーツの祭典オリンピックでは陸上競技の選手もタトゥーの選手が多々見られます。

しかし、一方で「タトゥーはNG」という人たちがいるのも事実です。特に、日本国内には、です。ですから、気遣いの為、井岡選手はファンデーションで隠していました。が、ラウンドを重ねるうちに汗だくになりました。最強の敵田中恒成選手と殴り合っている最中です。タトゥーが見えたとかどうのとはセコンドも井岡選手も言っていられません。

試合後、内山高志氏(元WBAスーパーフェザー級王者)らレジェンドがYouTubeで試合の感想を語っていましたが、タトゥーに言及などしていません。それほどの熱戦でした。客があってこそのプロスポーツ。一部がクレームを入れたからと言って、その選手の熱戦まで奪って良いものでしょうか。JBCはそんな事より、どうやってボクシングを普及させるか、にその熱を注入した方が良いでしょう。井岡選手、田中選手、ナイスファイトでした。タトゥー問題に負けないで下さい。(文◎久田将義)

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