福島第一原発事故 10年目で出て来た新事実 「フクシマ・フィフティー」のアナザーストーリー 第4回(インタビュアー│奥山俊宏、久田将義)

事故直後の福島第一原発内。

俺はこんなことしにきたんじゃないんだよ!」
12日朝、菅直人首相の怒鳴り声が作業員たちにまで聞こえた。作業員は「怒ってるよ、菅直人」「何しに来たんだよ」と苦笑していた

 

放管員というのは放射線管理員を指す。サーベイは「調査」「測量」「実地踏査」を意味する英語だが、ここでは、放射線量を測定し、放射能汚染を探ることを指す。アラームというのは、警報つき線量計を指す。

奥山:直すバッテリーをディーゼル消火ポンプにつなごうとされてたわけですよね。それは起動するためのバッテリーっていうことですよね? 一番しょっぱなのエンジンかける。

マサ:はい、そうです。

奥山:それをやってる途中で余震があって逃げて、そのあとはもう戻れない?

マサ:そのあとは実は、それでニュウインの朝にその件があって、免震棟に戻ったときにサーベイを当然受けますね、中に入るときに。それでもう全身汚染だったんです。ぼくともうひとりは全身汚染で。そのときのオーダーって、震災前のバックグラウンドとかのオーダーを使ってるんで、ちょっとでもすごい汚染になっちゃうんですね、まだ。そういうバックグラウンドを上げて、「このぐらいだったら大丈夫」っていうのをまだ設定してないんで、震災前の状況でこうなっちゃうんで、実はたいしたことないんだけど、すごいことになっちゃって。だから全身汚染っていうことになって。
で、免震棟に戻って、サーベイしたら全身汚染だっていうことで、着てるもの全部脱いで、コールドシャワーに行って、戻ってきたんだけどオーダー落ちなくて。で、ぼくともうひとりはそのまま免震棟の宿直室みたいなところがあって、そこに隔離状態になっちゃったんです。「ちょっと出ないでください」っていう話になっちゃって。でもう、そのまま12日は何もしないですよ。

【「オーダー」というのは放射線量の数値の桁の数を意味する。のちに事態が悪化していくにつれて、放射線量は増えていくことになる。が、12日朝の時点では、事故発生前と同じように微弱な放射線も検知できるように測定器を設定していたようだ。】

福島第一原発事故 10年目で出て来た新事実 「フクシマ・フィフティー」のアナザーストーリー 第1回(インタビュアー│奥山俊宏、久田将義) |

奥山:ちょっと話戻りますけど、つけようとされてたんですよね、バッテリーを。それはうまくいけばちゃんと直るような感じでした?

マサ:いや、結局はバッテリーが生きるってことは電気が生きるんだけど、駆動するほうに全然影響があったのかないのかっていうと、そこはちょっとわかんないですね。どこまで水没してたかわからないんで。
機械的に、水没してたらダメな部分っていっぱい出るじゃないですか。電気的にこっちを生かしてケーブルが生きてても、機械的にこっちのものがどんだけ生きてるかちょっとわからないんで。
でもあとで聞いた話だと、ぼくがやり残したやつは東京電力の人があとから行って、つないでやったんだけどダメだったっていうのを聞いた。