福島第一原発事故 10年目で出て来た新事実 「フクシマ・フィフティー」のアナザーストーリー 第5回(インタビュアー│奥山俊宏、久田将義)

災害直後の双葉郡。

1号機爆発。東電社員が「ブローアウト!」と叫ぶ。「パカーンみたいな、あんまり重い音じゃないんですよ。要はそれだけもろくできてるんで。抜けてもいいようにできてるんです」(福島第一原発作業員)

 

■12日午後、1号機爆発に遭遇

2011年3月12日午後3時36分、1号機の原子炉建屋が爆発した。

奥山:1号機が12日午後に爆発しましたよね。そのときはどちらにいらしたんですか?
マサ:12日の朝イチにやって、サーベイ受けてきて、「あなた方はちょっとこっちに行ってください」って言われて。で、汚染の度合いが、もうバックが上がりすぎて構内では計れないので、ぼくらだけじゃなくてけっこう何人もいたんですよ、ほかの業者の人たちも。10人、15人ぐらいいたのかな。
で、「みなさんは申し訳ないですけど、バックの低いところまで行って、身体サーベイ、もう1回やりますから」って言われて、12日の午前中のうちにバスに乗せられて、川内村まで行ったんです。バスに乗って。で、「ここでもう1回サーベイしましょう」っていうことで、川内村まで行って、バスから降ろされて。ひとりぐらい降りたのかな?、それで計ったんだけど、やっぱダメで。

【周囲の環境の放射線量が高いと、その中では、その人の汚染の度合いを測定できなくなる。福島第一原発構内はすでに線量が上がっていたため、個別の汚染の測定が難しくなっていた。「きれいになったかのサーベイがここじゃできない」と彼は言い渡され、バスに乗せられた。そして、福島第一原発から内陸に向かって20キロほど離れた川内村に線量の低い場所を探しにいくことになった。バスには20人ほどが乗っていたという。】

 

久田:ダメっていうのは高いってことですか?

マサ:やっぱ高い。汚染してる。

奥山:川内村のバックグラウンドはまだ高くないんですよね。

マサ:バックグラウンドは高くないですけど、こっちがダメで。「汚染してますね」っていうことで。構内にいると判断ができないものを、バックグラウンドが低いところまで行って判断できるようになったっていうことで、「ああ、やっぱりダメだね」っていう。

久田:川内村はまだ低かったんですか?

マサ:そのときはまだ大丈夫だったんです。そのときにはそのバスには東電の保安の放射線管理のほうの人がひとりついて、バスの中に15~16人。業者の人もいるし、東京電力の人もいるしっていう状況で川内村まで行って、「やっぱダメですね」って、1Fにもう1回戻ってきて、バスから降りたときにドーン。

奥山:1号機が?

マサ:免震棟の前の駐車場で。ぼくはまだ降りなかったんですけど、何人か降りたときにドーンって来て。で、座席のあいだにこう隠れて、窓から見たときに、もう窓の外じゅうはほこりと、あと保温材とかがブワーッとなってて。

久田:そのときはどういう気持ちだったですか?

マサ:そのときは何があったかわからなかったんで、「爆発?」みたいな感じですね。

久田:爆発するとかは想定してたんですか?

マサ:いや、全然してないです。ただ、そのときに中にいた東電の社員が、「ブローアウト!」って言ったんで、ああそうか、と。ブローアウトは知ってたんで。そういうことなんだと。

奥山:ブローアウトってなんですか?

マサ:ブローアウトっていうのは、原子炉の建物、RPV(原子炉圧力容器)の上の原子炉の建物の圧力が上がりすぎちゃったときに、逃がすために自動で開いちゃうんです。爆発して。そういうふうになってるんで。

奥山:パネルが外れるっていう。

マサ:そうですそうです、あれブローアウト。その状況だったんで。東電の一人が「ブローアウト!」って言ったときに、「そうなんだ、これ」っていう感じ。で、そのまますぐバスの中にもう1回乗り込んで。

奥山:ブローアウトって聞いて、それは安心する話なんですか?

マサ:そうですね、そのまま連続爆発が起こるわけじゃないし。そういうこと(連続爆発が起きるような事態)じゃないんで。圧力1回逃がしちゃってるんで。

奥山:そこでパッと理解したわけですか。

マサ:とりあえずは。でも、その保温材とかガレキとかホコリがブワーッと舞ってるのは、これ全部汚染してるはずだから、今ここにいちゃいけない、ということで、そこでも、だれかが叫んだんですよね、「バス出せ! バス出せ!」って言って、だれかが叫んで。
とりあえずバスの運転手さんも、「うわ、ここにいちゃいけないんだ」っていうふうになって、ブワーッとバスを構外のほうに1Fから外へ。そのときには東電の保安の人も乗ってたし、みんなまた乗ってたんで、東電の人同士が話をして、「どうするどうする?」みたいな話をしてるのを、ぼくらは聞こえないですけど、そこで話をしてて。そしたらその人が、「これからとりあえず2F(福島第二原発)に行きます。いったん避難のために2Fに行きます」っていうことで、2Fまで向かって。

奥山:それは放射線管理の人ですよね?

マサ:そうです。

奥山:爆発の音はどんな?

マサ:音はわりと軽いんですよね。パカーンみたいな、あんまり重い音じゃないんですよ。要はそれだけもろくできてるんで。抜けてもいいようにできてるんです。ホントに強固なものがそれ以上のものに壊されるみたいな感じではない感じなんで。ほんとに「抜けたなぁ」みたいな、いう感じですね。

奥山:ポコーン、みたいな、パカーン、という感じなんですね。

マサ:そうです。それのすごい大きい音。