Googleが暴力団に毎月数十万円を広告代として計上した件 暴排条例違反として警視庁は動けるのか

警視庁はこういった案件にどう動くのか(撮影@編集部)

「驚きました。そんな事あるのか、と。世界的企業がそんな事をしていたのでしょうか。我々銀行がそんな事をしたら金融庁から『次からは業務停止』という警告を受けるでしょう」と、ある銀行関係者は言います。

2月18日、住吉会組員坂井俊太容疑者ら4人が都内で覚醒剤製造で逮捕。販売目的で覚醒剤を国内で製造していたのですが、こういったケースは初めてと言われています。その坂井容疑者は

「坂井俊太容疑者(39)は現役のヤクザでありながら、「敵刺(テキサス)」という名前で、ラッパーやYouTuberとして活動していたことで知られている。(日刊ゲンダイ2022年2月19日)

いわゆる「アウトローYouTuber」と呼ばれている坂井容疑者ですが、このジャンルは、今に始まった事ではなく、10年以上前に隆盛を誇った「ニコニコ生放送」では「アウトロー生主」と言われる人たちが存在していました。YouTubeが盛況になってから、ニコ生からYouTubeへ大移動をしたり、新たにYouTubeを始める「アウトロー」も増えました。坂井容疑者はその中の1人な訳ですが、「現役ヤクザ」を堂々とタイトルや動画で宣言する人物は生主時代にはいなかったので、これも初めてのケースではないかと思われます。

ここで、さほど問題視せず、スルーされているのが「(坂井容疑者が)YouTuberとして活動」(前出・日刊ゲンダイより)の部分。

一説にはYouTubeで月70万円の収入を得ていたという報道もあります。問題視するべきはここで、これが本当だとするとGoogleが警察が言うところの反社会的勢力に月に70万円–ここではざっくり数十万円としておきますが―ー広告代として払っていた事になります。
2011年に暴力団排除条例(暴排条例)が東京都を最後に全国へ施行されました。警察庁の幹部が「この条例で全国からヤクザはいなくなる」とまで豪語した条例です。ところが結果、準暴力団、世間で言う半グレが「誕生」(警察庁がこの名称を発表)する羽目になってしまいヤクザはいなくなるどころか新たなアウトローの形態を生み出してしまった訳です。

東京都の暴排条例の基本理念には、こうあります。
《【条例の基本理念】「暴力団を恐れない」「暴力団に金を出さない」「暴力団を利用しない」「暴力団と交際しない」》(東京都暴力団排除条例ホームページより)

これにより、銀行や上場企業などの公共性の高い企業は、ヤクザとの付き合いを断つよう自粛しました。読者の皆さんも家や銀行で契約する時に、必ずと言ってよいほど「暴力団関係者の有無」をチェックする項目があるのを目にした事ではないでしょうか。
暴排条例は裏社会に影響を与えただけでなく、芸能界、出版業界にも波が押し寄せました。いわゆる「ヤクザ雑誌」と言われる媒体が廃刊に追い込まれ、書き手も困窮しました。またVシネマ業界も新作が作れなくなりました。

「ヤクザがこういう状況の中、YouTubeで稼げるのなら参入するだろう。車は買えない、銀行の通帳も作れない。人権を奪っているのだから食う為に何でもする」(指定暴力団三次団体幹部)。

ヤクザとはそういうものです。問題はGoogleのYouTube開設の仕組みと、それを見過ごしていたのかどうなのか問われる警視庁です。我々出版業界にも波が寄せ、仕事を奪われたライターもいる暴排条例はGoogleという外資系の会社に適用しないのでしょうか。