「RIZINゴールデンウィーク」が始まった 朝倉未来が「総合」に帰ってきた夜 

格闘技経験者らしき観客が側に何人かいたのですが、彼らも「ああ、またか」と呟いていた牛久選手の何度となくトライした引き込み。ラバーガード狙いかと思ったのですがそこからの展開がなく、試合後のインタビューでも牛久選手は悔やんでいたように、3Rでは思い切って仕掛けるしか勝機はなかったように思います。

牛久選手の何度となくトライした引き込み。これが仇となったか。

「格闘技王国・足立区」出身のファイターというだけで好感が持てる牛久選手です。次戦は斎藤裕選手の時のような、思い切った攻撃(斎藤戦ではテンカオ)がこの選手の長所だと思うので、是非そこを出してもらいたいものです。

 

●敗けても評価を上げた平本蓮選手

対戦相手の斉藤裕選手を初め、石渡伸太郎氏や朝倉海選手が平本選手の急成長ぶりについて触れていました。特にテイクダウンに対応する能力に驚愕のコメントが目立ちました。朝倉海選手は「化け物だね」。MMA五戦で、これだけの試合内容と評価は「平本幻想」とファンに言われ続けたそれを無くすどころか、次の試合が楽しみになるほどでした。

打撃でのスピード・威力は驚異の一言の平本選手(左)。

内容は「RIZIN初代フェザー級王者」齋藤裕選手がテイクダウンし壁レスで押し込む展開。ただMMAでは最も良くないとされる「背中をべったりマットにつける」という展開にはならず、国内トップクラスと言われる平本選手の立ち技の展開にもっていこうとしていました。

あくまで素人の感想ですが、空手スタイルの待ちに徹していたのは、弥益ドミネーター聡志選手にはハマったけれども、そこを研究した斎藤選手はテイクに徹底した作戦を採ったという、ベテランらしいテクニックに封じられた印象でした。2Rでは斎藤選手の意図が分かったいたと思うので、待ちから転じて自ら詰めていってもよかったと思います。

試合後、声を挙げて悔しがる平本選手。

けれども、考えてみてください。29日の主役だった朝倉選手は現・RIZINフェザー級王者クレベル選手に失神。メイウェザー氏(現役ではないので選手とは付けません)とはエキシビジョンとは言え、脳震盪でKO。そこから這い上がってきた朝倉選手。この気持ちの強さ。

徹底したテイクダウンで平本選手に勝利した修斗の伝承者・齋藤裕選手。

平本選手は、いまだそこまでハッキリとした負け(KOや失神)はしていません。朝倉選手はプレッシャーをはねのけ、4.29でカムバック。斎藤裕選手もそうです。特に斎藤選手は連敗中という、相当なプレッシャーの中闘いました。引退がかかっていたと言ってもおかしくありません。そこをサバイブしました。

平本選手はわずか五試合しかMMAはこなしていません。「艱難辛苦は汝を玉にす」。あえて言葉で自らを負いこんでいく生き方を選択している24歳の選手に、そんな言葉が思い浮びました。

また、かつて「江戸時代の侍の斬り合いってこういうものだと思った」とK1時代にアップセットを起こしたゴンナパー戦を平本選手は振り返った事がありました。10代でこのような修羅場をくぐった選手もまた、寡聞です。敗けた平本選手の底力に数々の選手が驚愕したのは、この修羅場をくぐってきた体験と、幼少期から格闘技漬けで過ごした、本当に格闘技を愛する格闘家である資質を分かっているからなのではないかと感じた次第です。

それと金原正徳選手の強さについても触れておかなければなりません。この日本総合格闘界の「大物」が何と二試合目に登場。新鋭・山本空良選手との対戦。ゴングがなると同時に金原選手はセンターを取り、山本空良選手との距離戦を制します。この、開始数秒の動きで「金原選手の勝ちだな」と思ってしまいました。結果は金原選手が打撃、レスリングで圧倒し勝利。ウガール・ケラモフ選手との対戦を要望していましたが、朝倉未来選手とやっても面白いのかなと思いました。

国内フェザーでNo.1の呼び声高い金原選手の次の相手が誰になるのか。

最後にマイナス面(大会運営のせいではないが)も記しておきましょう。