アイドルの「セカンドキャリア」を考える 「IDOL3.0  PROJECT」に参画する元AKB48島田晴香の提言

新アイドルグループ「IDOL3.0 PROJECT」でセカンドキャリアを担当する元AKB48島田晴香さん。自分で立ち上げた株式会社Dct社の代表取締役。

 

島田晴香さんと言えば、AKB黎明期から取材してきた身としては、チーム4キャプテン代行、チームK副キャプテンとして、「しっかり者」のイメージがあります。現在を「アイドル戦国時代」と言う人がいます。地下アイドルも含めれば一万人近くいると言われています(諸説あり)。アイドル卒業後の、第二の人生(セカンドキャリア)の方が長いとも言えます。そしてセカンドキャリアをどう過ごすのか、迷う人も多数いるでしょう。
本格始動した、秋元康総指揮のメタバースアイドル――『IDOL3.0 PROJECT』。画期的な取り組みの一つに、「セカンドキャリアを考慮している」点があります。そこに参画する元AKB48の島田晴香さんの「考え」を聞いてきました。

 

●アイドルが卒業後を考える時期

――『IDOL3.0 PROJECT』のひとつの特徴として、セカンドキャリアをどうするかということもちゃんとケア出来るグループにする、それを島田さんがご担当すると聞いています。

島田晴香さん(以下・島田さん) もともとアイドルのセカンドキャリア事業を3年間やっていて、その延長線上で今回お話をいただいて、Dct社(島田さんが代表取締役の会社)として参画させていただいたという流れになります。

――「IDOL3.0」の候補者が143人いると聞いてビックリしました。ここから面談とかされて絞る感じなんですかね。

島田さん 合格したばかりのメンバーにセカンドキャリアについてお話するのは少し気が引いてしまうこともありますが、情報として蓄えて欲しいなと思います。また、保護者の方にも1番の理解者でもあって欲しいので、保護者説明会などできないか運営と話している段階です。保護者の方にわかっていただくことが一番大事だと思っています。自分の娘を応援したい気持ちはあるけども、娘の人生はどうなってしまうんだろう?という芸能界への不安もあると思います。
でも、セカンドキャリアをしっかり考えてる事務所だったら、親も全力で応援できる。そしてメンバーも全力でファーストキャリアに取り組める。真剣に取り組んで、全力でやってもこれ以上は無理かもと思ったら、「島田さんのところに行けば大丈夫」というメンタルの面でもそういう部分があったほうが安定すると思うんです。

私自身も(AKBを)活動しながらセカンドキャリアのことを考えたりしました。高校卒業の18歳と大学卒業と新卒の22歳で悩みポイントが来るんですよね。同級生が社会人になって会社で働いたり、いま就活しているという話を聞いたりすると、自分はこのままでいいのかと思ったり。あと今回、親御さんが安心してるのはセカンドキャリアの部分と退職金がある点です。私も現役だったら欲しかったです(笑)。

――そうですよね。第二の人生を考えてあげないとホントにアイドルを応援することにならないんじゃないの?みたいなことは、個人的に思っているんですけどね。

島田さん センターになったり選抜になりたいっていう気持ちも、ファンの方のモチベーションにつながると思うんですけど、やっている側は「こんな自分でいいのかな」と思ったことが私自身もありました。(アイドルに)寄り添ってほしいなとは思いますね、ファンのみなさんは。一番の理解者でもあると思うので。

――例えば柏木由紀さん(AKB48第三期生)みたいにキャリアがある方が島田さんに相談された場合、フラットな関係でお話しするんですか?

島田さん はい。フラットで、ですね。

――柏木さんてアイドルとして、すごいですよね。

島田さん ホントすごいと思います。尊敬します。歌番組もMV観ていてもプロだなって。

――完成されていますよね。

島田さん 完成されてるにもかかわらず、パワーアップしてます。年齢的には体力とか厳しくなってくると思うんですよ。でもそれをずっと続けてるのも、自分のコンディションを整えるのもたいへんだと思います。

 

●一般企業に入ってショックを受けたこと

――島田さんは一時期、一般企業に勤められていました。カルチャーショックは受けました?
島田さん 受けましたね。自分が社会不適合者なんじゃないかと思うぐらい何もできなかったんです(苦笑)。同年代の子が当たり前にできてることが、自分はできないという劣等感だったり。自分は自分で良いのに焦ったり。それでメンタルがやられちゃったり。

――例えば電話の取り方が難しくなかったですか?

島田さん すごく難しかったです(苦笑)。台本みたいなのを自分で書いて、それを見ながらやっていました。でもつなぐときに何番を押して1回ガチャンって保留にするじゃないですか。保留になっていなくて電話切っちゃったり。

――それはありますよねえ。僕も新人の頃、電話で初めての人に「お世話になります」って言うのはおかしいと思っていました。

島田さん ホントそうです(笑)。「お世話になります」とか、まだ世話になってないのにどういうこと?みたいに思っていました。

――会社独特の定型文に慣れるのがちょっと抵抗あるんですよね。

島田さん でもこれが社会だと思って。

――会社員だと、自分が何もしなくても給料は発生します。それってプレッシャーに感じたりしませんでした?

島田さん ありましたね。営業を担当してたこともあって、営業が取れなくても固定給が振り込まれるわけじゃないですか。ぜんぜん成果を出していないのにお給料もらうのは申し訳なくなっちゃったり。

――そういうことも経験されてするから、セカンドキャリアに関しても保護者に説明できると思います。

島田さん 保護者の方も安心して娘さんを全力で応援してほしいっていうのもありますし、メンバー自体も中学生や小学生だからっていう年齢にとらわれず、自分がどう生きていきたいかっていうキャリア設計のところをしっかり情報として蓄えていくっていうことが大事になってくると思うんですね。
自分がどう生きたいのか、どういう人生を歩んでいきたいのかという想いにしっかり向き合うことが大事だと、起業して私自身が感じました。営業だったら毎月これくらいの売上を達成するとか、目標を設定するって大事だなっていうのはAKBのときに学びました。例えば「選抜に入る」とか「握手会の売上を伸ばす」とか。