下北沢を舞台に二人の青年の夢が交錯する 実話をもとにした映画『あとがき』 主演・猪征大インタビュー
――映画の公開がいま決まっているのが下北沢と浜松になってるじゃないですか。それはご出身でそういう話がっていうことですか?
猪征大 僕がプロデューサーに直談判しました。東京都内でも、どこでやるかまだ決まっていない段階で、でも全国でやりますよってプロデューサーが言ってたんで「じゃあ浜松の映画館でも」と言いました。一番デカい東宝の映画館もあるんですけど、そこでやるのは無理だっていうことはわかるので「じゃあどこならできるだろう」って考えたらシネマイーラという、いわゆる単館の映画館があるので、ここだと思って、プロデューサーに「こういう映画館があります。普段はこんな感じのを上映してます、たぶんイケる気がします、お願いします」ってしつこいぐらいお願いしたら当たってくださって。そしたら向こうの方も、「浜松の子なんだ、高校どこ?」。「ハマショウ(浜松商業)です」。「ハマショウ? いいねえ!」みたいな感じで決まったみたいです。
――それ言ったら浜松の人みんな行きますよ。
猪征大 そうですよね(笑)。浜松の人はミーハーなんで。まだ発表されてないところもあるので、これから下北で頑張ってお客さんが入ったら都内の他の映画館も話が出てるみたいなので、みなさんご協力お願いします。
――配信もできたらいいですね。
猪征大 それも想定しているみたいです。
――先ほど、人の心に残る役者になりたいとおっしゃってましたけど、猪さんの心に残ってる作品はどれですか?
猪征大 『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』という洋画です。いわゆるタイムリープもので、主人公がある年齢を境に家族が持ってる力で、過去に戻ることが出来る能力を身につけるんですよ。その日から人生が進んでいくなかで「うわ失敗した」と思ったら、過去に戻ってやり直してって進んでいくんです。終盤になって、過去に戻ることよりも今を大事することが重要で、今を大事に生きていれば過去に戻りたいということがなくなってくる。で、主人公が自然と過去に戻らなくなっていくっていう話なんです。
いつも、上手くいかなかったり、つまずいたりすると、誰しもあのときこうしとけばよかったなと思うんですけど、そうではなくて「今起きていること、今近くにいてくれる人」を大事にしていけば全部が愛しくなってくるというメッセージがあると思いました。
僕もあるときからそういう考え方に変わってきました。そう思うと、食べものすら愛おしいというか。このカレーライスのこのルーのこの一部って世界中で、僕しか食べられないわけじゃないですか。そうなると「自分に起きていることは全部ありがたいことなんだ」って思うようになり、昔を振り返ることがなくなってきたんです。『アバウト・タイム』を観てすごく感銘を受けてそうなっていったんですよ。なので僕はそういう作品を作れる役者になりたいと思いました。『アバウト・タイム』というのはすごく大事です。
――最後に映画を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。
猪征大 この映画は誰しもが感じたことのある感情を描いている作品だと思います。そこには目を背けたくなるところもあると思うんですけど。今を生きるすべての方に、ほんの些細な人生の応援歌になったらいいかなと思います。何が正解で何が間違っているとか、人生にそんなことはないので、今生きてることと過去に過ごした自分とこれからの自分を、たくさん愛せるような時間の一部になれたら嬉しいです。(文@久田将義 写真@菊池茂夫)
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