タイ国内では国境が近い地域の国道沿いに麻薬輸送や密入国者を摘発するために警察や軍が検問を設けているのですが、2月10日午前2時、タイ南部チュムポーン県内国道沿いのそんな検問の一つに長距離路線バスが停車しました。
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バンコク発ナコンシータマラート行きのそのバスが停車すると、一人の乗客が急いで降りて来て検問の警察官にこう訴えました。
「車内にいる10人ほどのミャンマー人の体臭が臭すぎて車内に臭いが充満して我慢ならない」
そこで警察官がバス車内に乗り込んで調べたところ、男性8人、女性5人合計13人のミャンマー人が乗車していました。年齢は6~29歳。入国検査証明書類を所持していなかったため全員の身柄を拘束して取り調べました。
現地のテレビニュースが報じた実際のバス
またバス運転手(28)と車掌(29)も拘束。バス運転手は、バンコクを出発後「オー」と名乗る人物から電話があり、途中の町でミャンマー人を乗せたピックアップ車が待っているので次の運び屋が待っているナコンシータマラートまで運んで欲しいと依頼されたと自供しました。1人あたり1,200バーツ(約4千円)を報酬として受け取る約束となっていました。
手はずどおり途中町でミャンマー人13人を乗車させたまでは良かったのですが、直後から他の乗客がミャンマー人らの体臭が臭すぎると騒ぎ始めてしまいました。とうとう検問で止めろと言われ仕方なく停車して逮捕される憂き目となってしまいました。
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ミャンマー人らは全員がミャンマー西部ラカイン州から来ていました。現地での生活は貧困を極め、命の危険もあることから、先に親族が移住しているマレーシアへ行くことを決意。
土地も財産も売り払ったカネで渡航手配を請け負うブローカーに1人あたり約35万円を支払っていました。
ミャンマーから山間部の国境を越えタイ北部に密入国を果たした後は、区間ごとに運び屋が雇われているらしく、ピックアップ車や長距離バスを何度か乗り継がされて、夜には手配された「キャンプ」で寝ながら移動し、最終的にマレーシア国境までほど近いナコンシータマラート行きのバスに乗ったところ摘発されたというわけです。
身の危険を感じて国を捨ててきたというのに...
ラカイン州といえばロヒンギャ族の居住地です。今回の13人はロヒンギャ族かどうか分かりませんが、マレーシアを目指していたという点からイスラム教徒の可能性はありそうです。仏教徒との対立があったのかもしれません。
そしてこの長旅の間、着替えなど持っていないと思われる一行はまさに着の身着のままだったものと思われます。臭うのも無理からぬことではあります。
警察は今後、ブローカーにまで捜査の手を広げると語っていますが、13人の身柄の取り扱いには言及していません。
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タイ人は昔ほどではないにしても一般的にミャンマー人を蔑視しあまり良く思っていない人が多いようです。それには18世紀にタイのアユタヤ王朝がビルマ(現在のミャンマー)軍によって滅ぼされたことを恨みに思っていることも関係があります。
もしロヒンギャ族であればなおさらです。近年ミャンマーから海路で脱出したロヒンギャ族が大挙してタイ南部沿岸にやって来たことから、迷惑ばかりかける厄介者という見方が大多数を占めているのです。
国際的な目もあるので不当な扱いは受けないとは思われますが、目的地マレーシアにはたどり着けることは、ないでしょう。神が与えた試練であれば、あまりにも荷が重すぎます。(取材・文◎赤熊賢)
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