先月話題になったニュースに「ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界記憶遺産」があった。中国が申請した「南京大虐殺」の資料が登録された。
『安倍晋三首相は15日、自民党外交部会の秋葉賢也部会長らに対し、「なぜ今回こうなったのかをしっかり検証してほしい」と指示した。』(毎日新聞 10月15日)
慌てる日本。こういうニュースをみると武力を使わずにいかに相手をチクチクやるか、仕掛けるかの重要さを痛感する。そして日本側が言いだしたのが「ユネスコへの分担金・拠出金の停止」であった。この反応はよかったのだろうか。
というのも「感情」に対して「感情」で返したら、「仕掛け」に対して「仕掛け」で返したら、ますます相手の思うツボになる気がするのだ。問われるのはずるがしこい、したたかな大人力だ。それもこれもイギリスの振る舞いをみてそう思った。
●嫌味なイギリスここにあり?
先月、中国の習主席が訪英し経済関係強化をアピールした。キャメロン英首相は英中関係の「黄金時代」と形容した。一方で人権団体は「道徳問題や人権問題、中国国家のために苦しんでいる人々の問題が置き去りにされている」と危惧したという(CNN10月21日)
中国とは経済重視。気持ちはわかるけどそれでいいのかという不満が国内にあった。そんななかイギリスはかました。習近平国家主席を歓迎する公式晩餐会で「1989年モノのワイン」を出したのだ。
《民主化を求める学生を中国当局が武力で鎮圧、多数の死傷者を出した天安門事件と同じ1989年のワイン。ただの偶然か、英国的な皮肉を込めた無言の抵抗なのか、さまざまな臆測を呼んでいる。》(産経新聞 10月28日)
嫌味なイギリスここにあり。よりによって中国にとって触れられたくない「1989年」をしれっともってきた。もちろんイギリスはそんな仕掛けは認めていない。フランス・ボルドー産の赤ワイン「シャトー・オー・ブリオン1989年」で、市価で1本約30万円はする正真正銘の高級ワインで最高級のもてなしだったと主張する。
意図的か偶然かはわからない。でも憶測や噂を立たせた時点でもうイギリスの勝ちだ。習近平がご機嫌にワインを飲む姿をあらためて確認し「あの田舎大名めが」とニヤニヤ笑う人もいたことだろう。中国に帰った習近平がもしこの「1989年のワイン」の噂を知ったらどう思うだろうか。「このヤロー、戦争だ!」ではなく「イギリスには気をつけろ」だろう。
ワインの噂だけで、めんどくさい相手だと思わせる。今後の牽制にもなる。軍事力を発揮しなくても効果がありそうな嫌味力。まずはここから見習ってほしい。
Written by プチ鹿島
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プチ鹿島●時事芸人。オフィス北野所属。◆TBSラジオ「東京ポッド許可局」◆TBSラジオ「荒川強啓ディ・キャッチ!」◆YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオキックス」◆NHKラジオ第一「午後のまりやーじゅ」◆書籍「うそ社説 2~時事芸人~」◆WEB本の雑誌メルマガ ◆連載コラム「宝島」「東スポWeb」「KAMINOGE」「映画野郎」「CIRCUS MAX 」
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