なんだか、すごいものを観てしまった。4月27日に後楽園ホールでおこなわれた「超戦闘プロレスFMW」興行である。
ここで「FMW連合軍対UWF連合軍」による対抗戦がおこなわれたのだけど、なにがすごいって、今回の発端として引っ張り出してきたのが「28年前」の因縁なのだ。
1988年、大仁田厚がUWFに挑戦状を持参したことがあった。しかし当時のUWFの社長から「チケット持ってますか?」と会場前で門前払いにされた。この屈辱を忘れなかった大仁田は遂に今年、UWF勢をリングに上げたのである。
ここから学べる教訓は何か。「人を馬鹿にしてはならない。相手はずっと覚えている」もいいだろう。しかしそれより「ビジネスに使えるものはなんでも使う」というタフさである。
28年という途方もない歳月をほかのジャンルで考えてみる。大相撲なら、千代の富士が大乃国に53連勝で止められたのが28年前だ。今年、千代の富士があのときの屈辱を忘れないと言って大乃国をまた土俵に上げたらどうする。
野球なら、中日から近鉄に移籍したラルフ・ブライアントが大活躍したのが28年前。「やっぱりブライアントは渡したくなかった」と中日が今になって言いだしたらどうする(肝心の近鉄はもうない)。SMAPが結成されたのが28年前。メンバーになれなかった人が「やっぱり入れろ」と言いだしたら、また揉める。
しかしプロレスでは28年前の因縁もありなのだ。どれだけ過去からの積み上げで成り立っているジャンルかわかる。
そしておこなわれたメインイベント「大仁田厚&雷神矢口&NOSAWA論外&保坂秀樹」対「船木誠勝&高山善廣&アレクサンダー大塚&冨宅飛駈」。
ここでまたすごいのは、UWF連合軍と言いながら「UWFとあまり関係ない」人もいることだ。しかし観客はゆるしている。なぜって、FMWの旗揚げ時は「おもちゃ箱をひっくり返したような」混沌がそもそも売りだった。
もうひとつ大切なことがある。観客は過去の因縁を楽しんでいるのは確かだが、それ以上に目の前のレスラーたちの「今日のゴハンを食う姿」を見ているのだ。レスラーにとっては過去にうっとりしてる暇はない。だから観客も現実を見る。
私は、船木誠勝が大仁田のリングに上がった光景そのものより、出場交渉で「OK」と言ったことを想像したほうが興奮した。かつての「正統派アイドル」の覚悟を感じたからだ。まだまだこの業界でやってやる、という。
みんなタフだ。もしかしたら「FMW連合軍対UWF連合軍」は、28年後もやっているかもしれない。
Written by プチ鹿島
Photo by 船木誠勝のハイブリッド肉体改造法
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