ゴールデンウィーク、皆さんはどう過ごされただろうか。この時期になると閣僚は「外遊」に出る。産経新聞が3年前に『「外遊」は遊びか?』というコラムを載せた。広辞苑で「遊」を調べてみると「他国に出ること」や「一定の位置や所属がなく、自由に動くこと」という意味もあったので『機動的なことを指す言葉のようだ。』と産経は書き、『外遊中、本当に遊んでいる政治家もいるが、機動的に働く人もいるわけだ。』とまとめた。
本当に遊んでいる政治家もいるらしい。今年の外遊はどうか。時事通信は『今年は余震が続く熊本地震などに対応するため、5閣僚が海外出張を取りやめるなど自粛モードとなっている。』(4月28日)。もしかしたらホントに必要な外遊に絞られたのかもしれない。
私が注目したのはベトナムに外遊した馳浩文科相である。『文科相 ベトナムで日本式教育の展開支援』(NHK・5月5日)というニュースがあった。たしかにこれも重要な目的だろう。しかし私は馳文科相のベトナム行きは「里帰り」だと思っている。
85年にプロレス入りした馳は、日本デビューの前にまず海外で修業した。そのとき名乗っていたのが「ベトナム人」なのだ。先輩レスラーの新倉史祐とコンビを組み、馳は覆面をして「ベトコン・エキスプレス2号」と名乗っていた。馳はベトコンだったのである。
カナダではヒールとして活躍してタッグチャンピオンにもなった。修業中の若手レスラーにとって、自分のことを誰も知らない海外で自由に暴れることは大切な期間である。レスラーとしての新しい自我を獲得できる。
観客が興奮しやすいギミックをプラスすれば、若手はプロレスの表現や技術を格段にはやく学べる。馳にとってそれがベトコンだった。ベトナムには足を向けて寝れない馳。ベトナムの要人たちは日本の文科相のそんな過去を知っていたのであろうか。誰か教えてあげたらいいのに。
馳はレスラー時代から「外遊」は得意だった。アントニオ猪木と対戦したいため、先に猪木と対戦が決まっていたタイガー・ジェット・シンのカナダの自宅に押しかけて直談判した実績もある。そのときシンに沼に突き落とされ、週刊プロレスは「馳、お前、そんなところで、何をやっているんだ?」と表紙に載せた。その甲斐あって、そのあと馳は猪木と対戦できた。外遊のおかげである。
今回のベトナム外遊も当時の週プロ風にいえば「馳、お前、ベトナムで、何をやっているんだ?」。
しかし、馳のことだから、このあと必ず大きな成果を発表してくれるに違いない。ただのゴールデンウィークのいい旅夢気分では絶対にない! ......はずである。
Written by プチ鹿島
Photo by 森奥の呪縛
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