「見ていた人こそ当事者だ」と思った日のことを「バイバイ、ヴァンプ!」の記事コメントで思い出した|成宮アイコ
「文句を言う人ってだいたい当事者じゃないよね」って?
歌舞伎町を歩きまわり、いちごミルクの缶ジュースを探していたのは、どんよりした気持ち甘いものでごまかせるかなと思ったからでした。
お昼ご飯を食べるついでに散歩をすることが多い裏通りで、わたしには見向きもしないキャッチの男性が「無料案内所」の看板をテーブル代わりにしていちごミルクの缶を灰皿代わりに使っているのを見かけてから、「そういえばいちごミルクって紙パックでしか飲んだことないな…」と、気になっていたのを思い出したのです。
その日、わたしがどんよりとしていたのは、出かける前に見たネットニュースの記事が原因でした。吸血鬼に噛まれると同性愛者になってしまうという映画の話題。人の性についてパニック映画のように扱うのは嫌だと思ったのですが、映画についてのお話しはここでは書きません。引きずられてしまったのはその記事についていたあるコメントでした。
見ている間にもコメントは増え続け、自然と一番上になっている書き込みが目に入ります。
「文句を言う人ってだいたい当事者じゃないよね」
え…。
書かれたのはほんの数分前でした。
その言葉を思い出すと、日中の繁華街のざわめきが一瞬消えてしまったように感じます。
当たり前だと思っていることが当たり前ではない。わたしはまたそれを忘れていた。そのたびこの気持ちを噛み締めていかなくてはいけないのかと思い、やけになって自動販売機をまわっていたのです。
ほんとうにわたしは、「当事者じゃない」のでしょうか。
参考記事:軽々しく”死にたい”と言える場所をつくろう|成宮アイコ・連載『傷つかない人間なんていると思うなよ』第一回 | TABLO