「見ていた人こそ当事者だ」と思った日のことを「バイバイ、ヴァンプ!」の記事コメントで思い出した|成宮アイコ

世界で起こるすべてのことを目の前で起こっていることのようにとか、インターネット越しに見た悲しいニュースをまるで自分のことのように、と思えるほどの想像力はわたしにはありません。

そうありたいとは思うけれど、日々を生活していくことに気持ちがいっぱいで、そこまで細やかな思いやりをもつことができないからです。

けれど、明日は自分かもしれないと思うことはできます。

自分のできるときにできる範囲のぶんだけ、考えることができます。

だからこそ、「みんなおたがいさま」というくらいの気持ちは保っていたいと願うのです。

人が傷つく可能性がゼロのものなどないけれど、そこに近づけることはできるはず。世界は分断されてはいないはずだけれど、できることなら傷つける可能性も「手法」であるとは思わない場所で暮らしたい。

わたしたちはそれぞれ、そのくらいの想像力くらいもっていてもいいじゃないか。

力をもったひとが大きな声で、「冗談を本気にするな」と笑うことに、それは違うんじゃないかと思うように、今後もずっと想像するということが時代遅れにならないようにあるために、わたしにできることはこんな当然(であってほしい)ことをわざわざ声に出して、そうだよねと確認しあうことくらい。

そしていずれ、そんなことすら必要がなくなればいいなと思うのでした。

 

ねえ、それって、難しいですか。

 

(文◎成宮アイコ 連載『傷つかない人間なんていると思うなよ』第三十三回)

 

成宮アイコ

朗読詩人。朗読ライブが『スーパーニュース』や『朝日新聞』に取り上げられ全国で興行。好きな詩人はつんく♂さん・好きな文学は風俗サイト写メ日記。夢はアイドルへの作詞提供。2019年皓星社より朗読詩集「伝説にならないで」刊行。ほかの書籍に「あなたとわたしのドキュメンタリー」(書肆侃侃房)がある。EX大衆、Rooftopでもコラム連載中。

 

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