セクハラを訴えたら焼き殺されたバングラデシュの女子学生と同じく、私が見た焼かれるイスラム社会の女性

 

火をつけた男は裁かれることはなかった

彼女の名前はサンギタ。首にまかれた紅いショールを取ると、顎から首筋にかけて無残なやけどの跡が今もくっきりと残っていた。

「嫁いでからしばらくして、夫が他の女と結婚すると言い出したんです。それで私のことが邪魔になって灯油をかけられ火をつけられました。幸いにも近所の人が助けてくれて命だけは助かりました」

元夫の家族は、明らかに彼女を殺そうとしたわけだが、何の罪にも問われず、さらに元夫は新しい妻を娶り以前と変わらぬ生活をしているという。一方で彼女は警察に訴え出るわけではなく、受けた屈辱に静かに堪えていた。

死んだヌスラトは、己を含め虐げられるイスラム教徒の女性たちの姿に黙っていることはできなかったのだろう。彼女の死が無駄死にならないことを願うばかりだ。(文・写真◎八木澤高明)

参考記事:日本で初めて起きた宗教対立による殺人事件 夏休みのキャンパスで狙われた『悪魔の詩』翻訳者|八木澤高明 | TABLO