阿蘇山の夜道 「夜中に寝ていると『窓の外を見ろ!』と叫ぶ何者かの声」|川奈まり子の奇譚蒐集二七

勇さんが生まれ育った阿蘇の辺りにある有名な怪異譚は〝赤橋〟という通称で知られる阿蘇大橋――飛び降り自殺が多く、橋のたもとに〝まてまて地蔵〟というお地蔵さんが建てられている――にまつわるものと、西南戦争がらみのものが多く、防空頭巾を被った女性と子どもが登場する話は知らなかった。

勇さんだけに見えた幽霊なのかもしれない。しかし勇さんの家系には第二次大戦で死んだ母子の逸話などもなく、やはりよくわからない。

ただ勇さんは、このことがあってから、小学六年生のときに見た光る水色の玉について思い出したのだという。

どちらも家の前を通る国道沿いで起きた出来事なので、今も実家に帰るたびに記憶に蘇らせないわけにいかないとのことだ。(川奈まり子の奇譚蒐集・連載【二七】)

あわせて読む:親黙り、子黙り 「4歳児ぐらいの大きさの真っ黒な物体」|川奈まり子の奇譚蒐集二七(下)