特殊詐欺事件裁判で明らかになった「受け子」の報酬 使い捨てにされる彼らに下る刑の重さとは?

朝早く市場で働く母親

「事前にトークマニュアルも渡されてたし、大丈夫だと思ってました」

実際にそのマニュアルで、一緒に上京してきた友人は受け子として150万円の現金を騙しとることに成功していました。友人が成果を挙げていることに焦りなどもあったと思います。それが演技の綻びにつながったのかもしれません。

報酬は騙し取った現金「100万円以下なら5万円、それ以上なら10万円」という約束でした。

事件の全体像を彼は把握していませんでした。何人の人間が事件に関わっていて、誰がどんな役割を果たしているのか、ほとんど知らされていません。

特殊詐欺事件で逮捕される可能性が最も高いのは被害者と接触する受け子です。そのため詐欺グループは受け子には情報をほぼ渡しません。受け子は何も知らないまま、最も危ない橋をわずか数万円の報酬のために渡らせられるのです。何も知らない受け子が捕まったところで詐欺グループの中枢にいる人間が捕まることはないので、グループには何の損害もありません。受け子などまた数万円の報酬をエサにどこかで勧誘してくればいいだけの話です。

何も知らない受け子でも特殊詐欺に加担した者への判決は重たいのです。この事件では執行猶予付きの判決でしたが、初犯でも実刑判決が下されることもあります。そんな情報ももちろん知らされません。