コロナ禍で苦境に立つ日本格闘技界 「RIZIN」逆襲なるか 榊原CEOに聞く 「格闘技界は無くなってしまうのか」(前編)

率直に答える榊原CEO。

 

6月17日、RIZIN・榊原信行CEOのツイートが気になりました。

 

とにかく今、焦っています

国の要請に従い3つの大会を中止し
7億円の売上が飛んだ

夏のメガイベント再開を目指してここまで来たが
現状では大観衆を入れたイベントは難しい

選手たちも困窮していて
生きていけなくなってしまう

……このままでは座して死を待つのみになる

次の一手をどうすべきか

 

そして、8月9日・10日の2日間にわたり、横浜のぴあアリーナMMで『RIZIN.22』『RIZIN.23』開催が決定。

RIZINと言えば、地上波で唯一、放送している格闘技団体。目指している格闘家が数多く存在します。

しかし、東京都内のコロナ感染者は連日200人超えの報道。格闘技はこの危機にどう立ち向かうのか。一格闘技ファンとしてRIZIN・榊原信行CEOに伺う事にしました。

 

――先日の榊原さんのTweetが話題になりました。真意をうかがいに来ました。

「僕はTwitterで自分の胸の内とか思いをつぶやいたことがなくて、今までプロモーション的なことしか載せていないんですよ。今回は、こういう時だからこそ自分の思いをSNSを通じて伝えるべき、発信しておくべきだな、と思ったんです」

――意図したツイートだったという事ですね。現在、コロナ禍で世の中が「格闘技どころじゃない」という雰囲気になっていると思いますが、いかがでしょう。

「RIZINは大丈夫だろうときっとみんな思っているんでしょうけど、実はそんなことはないんです。コロナの影響は深刻で、格闘技界に向けられた目も……これはべつにK-1がどうのではなく、ただ結果的に政争の具みたいにされてしまったところがありますよね。あの局面(3月22日のさいたまスーパーアリーナ大会)で、もし私が同じ立場であれば、そこまで試合の準備をしてきた選手、試合を楽しみにしていたファンのことを考えたら、大会を中止するにせよ、実行するにせよ相当迷ったと思うんです。結果的には、そのあとから格闘技界に対して風当たりが強くなってしまったと感じています」

 

格闘技大会開催は世間のひんしゅくを買った?

――確かに当時は、ワイドショーやニュース番組でも「格闘技の興行なんかやって大丈夫?」という論調でした。

「そもそも格闘技界って色眼鏡で見られている業界なんです。政府系の支援もなかなか届かないですし。安倍総理とか毎日、『過去最大規模の支援をして』と言うけども、今が大変なわけです。あまりにもシリアスな状況を僕らは実感しているし、選手にもどこまで話していいのか難しいところですが率直なところをツイートしました。

でも、このタイミングだから、苦しいことは苦しいとちゃんと伝えておくべきかな、と。ホントににっちもさっちもいかないんですよ。興行に打って出れば『自粛』という名の下、『コロナ警察』みたいな人たちから袋だたきに遭う。それでも大会を開かないと売上は上がらないわけです」

――「世間vs格闘技」みたいな図式にも見えました。でも興行をしないと選手も運営も生活できないというジレンマですね。

「そうですね。4月が終わり5月が終わり6月になって、突然血液であるお金が止まることの衝撃ですね。それを乗り越えていくことの苦しさというのはRIZINなんかは言ってしまえば吹けば飛ぶような運営母体なので、このままだと座して死を待つことにもなりかねないなという、あのツイートは心の叫びですね」

――それはファンの方とか格闘家の方たちにも伝わったと思います。

「強烈な形で伝わっちゃったかもしれないけど、下駄も履かずに7億……僕らは4月19日の大会、これはチケットも売っていましたが開催できずに払い戻しです。そこで上がるはずだった売上がなくなった。

5月17日の仙台大会も同時に中止した。そのタイミングではなんとかやれるかなと思っていた7月5日の大阪の大会もゴールデンウィークぐらいに発表しなくちゃいけないところで、一番感染者数も増えていたタイミングだったし、これは無理だな、と。

実はめちゃくちゃ水面下でもがいていたわけですよ。何とか、この中でも三密を避けた大会を模索してみたり、いろんな自治体とも話を繰り返してきた。ファンの人とか選手には緊急事態宣言が出て、「我々としてはこの時間を前向きに捉えて夏にメガイベントをやる」という形でカムバックしよう、とも言ってきました。

これは自分に対する鼓舞でもあり目標設定でもあり、選手とかファンにも、やっぱり希望がなくては生きていけないので、漠然としたものかもしれないけども、そういうものに向かってみんなでいまの時間を乗り越えていこうっていうひとつのメッセージでした」