「那須川天心vs武尊戦は実現させなければいけない」 RIZIN榊原CEOに聞いた コロナ禍で苦境に立つ格闘技を盛り上げるには(後編)
――榊原さんの「向こう側」というのはなるほどと思いました。僕はラグビー部だったんですが、今回のラグビーワールドカップ日本開催で、もしかしたら初めて「向こう側の人」に届いたと思うんですよね。
「僕もラグビーが好きで昔から観ているんですけど、無茶苦茶面白いスポーツだし、やるのも面白いし、でも日本には受け入れられないスポーツだなってラグビー界の人たち自らほとんどがあきらめていたじゃないですか。けれど、今回のワールドカップで『向こう側』に届いた。バスケットボールでも八村塁選手が出てくると、日本人もイケるじゃん、みたいな。ラグビーがあんなに盛り上がるとは思わなかったけど」
――思わなかったですね。10年前の成績を見ていると。
「やっぱり強いってことだよね」
――今回のワールドカップで榊原さんがおっしゃった「向こう側」に届いたんだなっていう感じがしたので、格闘技もその向こう側に届くような突破口があれば、と思います。
「そうですね、それが堀口だったり那須川天心だったり選手が出てくることで、普段は格闘技を観ない人にも興味が湧くような流れを作らなくちゃいけませんね。ボクシングでいうと井上尚弥のような。やっぱり圧倒的な強さ、それを絶対的なものとして持っている選手がひとつ、勝てる可能性のある武器にはなるので」
格闘家とYouTube
――そういった「普及」という面で言うと、格闘家でYouTubeをやる選手が多くなりました。朝倉未来選手、朝倉海選手が代表的だと思いますが。
「YouTubeでの圧倒的な支持というか登録者数を持っているというのはとても大切なことではあると思います。他のメジャースポーツと比べても格闘技の選手たちのフォロワー数とか登録者数って多いんですよ。
そういう意味でいうとチャンスはあるのかなという気はするんですよね。興味がある人も実はたくさんいるけど、興味はある、認識はしている、でもわざわざ観に行こうとか、「今日RIZINだよ!」ってみんなをワクワクドキドキハラハラさせるだけの期待感を持ってもらえているのか、もらえてないかっていうのが大きなポイントなんです。
舞台だけではできないし選手だけでもできないので、そこは選手とともに作り上げたいですね。ようやくRIZINにもそういう熱がつきつつあるので、そのなかで求心力を持っている選手たちを送り出しつつある、というのがいまのフェーズ。コロナの影響でいったん立ち止まってしまっていもますが、この2020年、オリンピックも含めてスポーツに注目が集まるタイミングでもあるので、いろんなことを考えてはいたんですけどね」
――スポーツや競技が市民権を得ることは興行上、大切だと思うんですけど、そのへんは何かお考えになってますか? 例えば「このコロナ禍で格闘技やるの?」みたいなことを言う人もいると思うんですけど。それは市民権がまだ得れられていないからだと思うのですが。
「市民権を得る、メジャー感を持ってもらうためにも絶対に必要な事。それは地上波で放送する事ですよ。それが格闘技の再生・復活にとって大切なファクターだし、そういうことをわかりやすく象徴するのがフジテレビのゴールデンタイム。そして大晦日に『紅白歌合戦』『ガキの使いやあらへんで!』の裏で5時間の放送枠を持っているっていうことが、ここが担保できたことでいまの格闘技の熱なり、もう一回格闘技が復活に向けて動き出したということのわかりやすい象徴だと思うんですね」
――大晦日はデカいですね。
「選手たちも、今、地上波ゴールデンで放送されるっていうのがRIZINだけなんで、そういうことでいうとRIZINに上がりたいという大きなモチベーションというか理由にはなっていますよね」
――地上波放送でやる格闘技はボクシングとRIZINだけですし。
「そうですね。それとこれはみんなの生活習慣のなかで大晦日という特別な日に『紅白』の裏にまた格闘技が戻ってきたということは僕らにとっては大きなことだし、それが僕らをメジャーにするうえではどうしても欠かせないファクターではあるっていうことです」
参考記事:あの「伝説の路上」で生まれた 決して逃げない覚悟 「天才」総合格闘家・朝倉海選手(YouTuber) | TABLO