追悼・宅八郎氏というトラウマ 「僕は宅さんとモメて十二指腸潰瘍になりました」

いざこざでとうとう十二指腸潰瘍に

あるライターに紹介してもらい、宅氏と初めてお会いしました。渋谷の鯨料理屋で飲んだのをおぼえています。それから、僕が前からどうもうさん臭いと思っていた自称「サブカル界の黒幕」・中森明夫氏の批判記事を書いてくれと依頼しました。

機嫌よく引き受けてくれまして、内容、原稿料などを確認のうえ執筆の運びとなりました。締め切り間近、原稿が届きました。多少、宅氏の毒が抜けているような印象もありましたが、僕としては充分「黒幕ぶり」を斬ってくれたと思い、満足のいく出来だったのです。

「上手いなあ」

原稿を見た第一の感想です。
この記事を読んだ中森氏は怒るだろうか、またいつもの内容証明書を送ってくるだろうか。いずれにしても僕はヤクザや右翼のような方々の反撃を受けていたので、こういったサブカル界の場合どのような文面で反撃してくるのか、興味があるというより、ほとんどウキウキした状態で待っていました。ハッキリ言うともう喧嘩腰でしたが、結局反論はありませんでした。

「反論権を守る」という原則からすれば、反論を載せる事も当然考えていました。

ところが、別の方からの反論権を守らなければならなくなりました。原稿の中でライター金井覚氏のことに触れてあったのです。宅氏のホームぺージで実名記載されていますので、ここでも記します。
原稿の趣旨は「黒幕中森」批判なのですが、金井氏に関する記述はあまりよくはない内容が書かれていました。

すなわち、
「金井氏が内容証明の抗議をもらった時点でかなりビビっていて、ボクに泣きついた。公開討論の場もボクが指南書を作ってやった」(ボク=宅氏)
というような内容でした。

金井氏から発売後数日たってから電話がありました。この記述について、ひとこと言わせてくれという事です。僕はそのことを宅さんに伝えました。これは金井さんからの反論です。これは誰もが持っている「反論権」ですから、これを守らなければならない義務が編集者にはあります。

すると、宅氏は「次号で掲載するから追加取材させてくれ。それは自分の名前で書いた記事が読者に対して欠陥品を提供したことになる。だから反論を掲載するのではなく、追加取材をさせてくれ」と言います。巧みな言い方と僕には思えました。

一旦は僕もその言葉に納得してしまい(言いくるめられた訳です)、金井氏にその旨を伝えました。
「追加取材する形でどうですか」と。

しかし、後から考えると、書かれた側には反論権があり、追加取材は宅氏の「わがまま」に近いです。あるいは、その頃宅氏と金井氏は仲が良くなかったため、宅氏としては金井氏の反論などもってのほかだと思ったのかとも推測しました。

ここで僕は板ばさみになります。