日本唯一の刺青専門資料館に行ってみて思う「りゅうちぇるのタトゥー」問題|Mr.tsubaking

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これは遠い昔でも遠い外国でもなく、ほんの数十年前の日本の写真です。りゅうちぇるを擁護する人々でさえも、この集団に出くわしたら怯んでしまいそうな写真ですが、ここからも、タトゥーへの賛否が分かれる歴史が見えてきます。

日本は山と海の豊かな国土です。そのおかげで古くから、農民と海民が共存して暮らしていました。
農民は田畑をつくり、作物を育て収穫し、その間に利用する水も水路を作って田畑へ導きます。つまり「制御された自然」とともに生きているのです。
一方海民は、もっと荒々しい自然に向き合っています。落水すれば命の保証のない海へ漕ぎ出し、漁へでます。そこにいる魚は稲のように従順ではありませんし、まして海民の中には、糸や網を投げるだけでなく、自らの体を海に放り出し潜水して漁をする者もいました。荒ぶる海に直接さらされ揉まれる漁師の肌はもはや「自然の一部」。

ここから、農民は自らと自然を分けて捉え、皮膚を「自然との境界線」と考えました。しかし、自らの肌を自然の一部と感じながら生きる漁師は、その境界線に針で穴を開け大胆なデザインを彫り込んで、野性的な自然の力を体内に侵入させたのです。

この農民的感覚と海民的感覚の違いもまた、賛否が分かれるルーツとなっているのです。