能町みね子が日体大相撲部齋藤一雄監督に聞く 相撲の稽古・技術・そして大相撲 第3回
能町さん 輝関も。
齋藤先生 輝関は小学校からやってますから。
能町さん あ、そうか。相撲経験がほぼない意味でいうと、高安と……?
齋藤先生 稀勢の里関と高安関ぐらいしかいないですよ。
能町さん そうですね……、中卒で入っても、元々やってる子がメインですね。
齋藤先生 炎鵬関なんか大卒ですけど、輝関と子供のときから一緒にやってますからね。相撲経験者じゃない力士はあんまりいないですね。
能町さん 今は子供の頃からある程度相撲をやり込んでいたりして、経験して入るパターンが多いですね……。あ、経験がないといえば、それこそ白鵬関とか。
齋藤先生 そういう感じになっちゃいますね。
能町さん 昔は叩き上げか学生か、みたいなことをよく言われましたけど、もうそういうものもあんまりないんですかね。
齋藤先生 意味ないですよ。時代が変わってきてるし。昔だと大卒は大関・横綱になれないなんて言われていましたけど、そもそも論として、叩き上げもほとんど横綱になってないんで。
能町さん そうですね(笑)。言ってみれば、若貴の時代だって。
齋藤先生 彼らは相撲経験者ですから (註・若乃花、貴乃花は齋藤先生の明大中野中学・高校相撲部の後輩)。
能町さん そうですね、その前からやってますからね。いまは中卒、高卒、大卒で分けるのはそんなに意味がないことになってきたんですかね。
齋藤先生 あんまり意味がないです。高校の無償化というのもあって、経済的に厳しくても高校に行けるじゃないですか。そうすると親は高校ぐらい行かせたいと思うし、相撲やってて強ければ、私立の高校は色々条件つけて寮費も免除、食費も免除、もちろん学費も免除で行ける学校もいっぱいあるんで。
能町さん そうなると、大相撲に入るときの年齢だけですもんね。
齋藤先生 早く入ってメリットがあるかというと、ちゃんと調べてはいないんですが、中卒高卒の方が上に行ける可能性は低いです。大卒のほうが関取になる率も高いし、上に行く率も高いと思います。大関で言えば、単純に考えて貴景勝関が高卒で正代関が大卒、あと……。
能町さん 朝乃山関も大卒ですね。
齋藤先生 そう考えると、大卒は決して損はないです。昔は横綱になっている力士が中卒ばかりでしたけど、もうそういう時代じゃないですから。若貴の前の時代は確かに中卒ばかりで、大卒の横綱は輪島関だけ、大関も朝潮さんとか何人かしかいませんでしたけど、そのあと外国人がいっぱい入ってくるようになったら少し変化してきて、現在みたいになってきたという感じですね。
能町さん そうなると、大関、横綱になるというのは何が違うんでしょうね? 観れば観るほど、どうしたら横綱になれるのかどんどんわからなくなってくるんですよね。