総合格闘家・平本蓮選手ロングインタビュー 「人に優しく生きようと思っている」 新生K—1の申し子から「格闘技の申し子」へ
昨年の大晦日前に続いて、一年越しのインタビュー。RIZINでの萩原京平選手との敗北の後、渡米し、ルーファスポーツジムにて修行を開始。渡米後、初の試合となるのが3月6日開催の「RIZIN LANDMARK vol.2」。相手は新進気鋭・キックボクシング出身の鈴木千裕選手。ストライカー同士の対決となり勝負論のあるマッチメイクと、平本選手の発信により、格闘技ファンはもとより、ファン以外の期待も高まっている。その平本選手は試合を1か月後に控えて、何を考えているのか―ー。
■去年の試合が終わったあと、自分は何がしたいんだろうって考えたんですよ
――以前、堀口恭司選手と那須川天心選手がYouTubeで共演していて「日本の格闘技界は遅れている」という話をされてたんですね。その理由が、ざっくり言うと「日本はまだチームで戦っていない。個人対個人になっている。アメリカはチームで作戦を立てている」ということだったんですが、アメリカに行ってみて、日本の格闘技界の風景に違和感はありました?
平本蓮選手(以下・平本選手) アメリカ人は年功序列という概念がないから、僕が例えば打撃が強かったら「それはどうやるんだ?」ってチャンピオンでも関係なくどんどん聞いてくれるんですよ。セルジオ・ペティス(Bellatorバンタム級王者)も色んな技術をたくさん聞いてくれて、僕も嬉しかったので色々話しました。
日本では僕は、ジムに行くとだいたい年下なんですよ。でも、そういうの関係なしにどんどん聞いてくる貪欲な人もいるんで、そういう人は練習の質が違うなって思います。無駄なプライドというか、チームとしての練習とか戦略も、もちろんあるんですけど、そもそもつまらないしきたりがないから(アメリカは)トレーニングの効率が良いんですよね。
――効率が良いということは、シンプルに考えたら強くなる近道ということですよね。渡米中のYouTubeも拝見していますけど、言葉の端々から何か違ってきていると感じました。
平本選手 2週間ぐらいで住んでいるところを追い出されちゃったんですよ。その次に泊まったホテルはコインランドリーが2キロぐらい先にしかなくて、毎日練習が終わったあと歩いて通ってたんですけど、そういう時間も自分を強くしてくれたなと思います。
小さい頃に戻った気分で、どこを歩いても初めて見る景色だから感動が違うというか。東京ってやっぱり凄いと思うんですよ、これだけ小さいのにいろんなものがあるし、逆にないものがない。僕がアメリカで行った場所は、そんなに都会でもなかった。現地の人の優しさをめちゃくちゃ感じたんですよね。これが誰かと行ってたら感じなかったと思うんですよ。
留学先で留学生としか遊ばないみたいなヤツって終わってるなと思うんですけど、1人で行ったからこそ向こうの人の優しさが心から沁みたんですよ。そういう部分で練習でも精力的にどんどん強くなって、教えてくれたみんなが喜ぶような形を見せてやりたいと思って。だからホントに努力する事が楽しかったんですよ。
――なるほど。それで言うと平本選手ってアンチがいるじゃないですか。
平本選手 はい。
――昨年インタビューした際、平本選手は「孤高でありたい」という主旨の言葉を使っていたのですが、アンチは「そんな事言っているけど色んな人と一緒に練習やってんじゃん」みたいなことを言うんですけど、違うんですよね。ツルむんじゃないんですよね。「いざとなったら1人でできる」っていうことだと思うんですよ。
平本選手 そうですそうです。
――同じ志の仲間はいるじゃないですか。どの業界でも。誰でも。けど孤高ってそれとは違う意味じゃないですか。だから今、アメリカのコインランドリーの話を聞いて、それも成長という意味だと感じました。
平本選手 確かに。だってアメリカでキツい練習してコインランドリーに行ってる状況ってどう考えてもネガティブな状況だと思うんですよ、ホントにキツいなって思う瞬間だと思うんですけど、それがすごい楽しかったんですよ。なんか身に沁みて生きてるって感じがあるんすよ。生きていることを実感できるというか。
――去年言っていた「孤高」という言葉とつながる部分がありますね。
平本選手 そうですね。自分は何で生きているんだってちゃんと考えたときに、人はいつか絶対死ぬじゃないですか。いつか死ぬっていうのを心に刻んで、人生変えるなんていつかじゃなくて、今変えるしかないんですよ。今日練習行くのもそうだし。