総合格闘家・平本蓮選手ロングインタビュー 「人に優しく生きようと思っている」 新生K—1の申し子から「格闘技の申し子」へ

――あと1ヶ月ちょっとですけど、入場から試合まで(恐らく)メインになるであろう責任と楽しみがありますよね。

平本選手 面白いジンクスがあって、K-1のときからなんですけど、入場曲で甲本ヒロト以外を使うと負けるんですよ。

――そうなんですか!

平本選手 甲本ヒロトの曲を使って負けたのが世界トーナメントの決勝戦で、2-1で勝ったかなと思った試合だったんですよ。それでも準優勝だったんですけど。面白いぐらいに甲本ヒロト以外の曲で試合すると……作ってもらったんで申し訳ないんですけど、甲本ヒロト以外の曲で出ると負けるんですよね。試合の気持ちの乗り方が変わるのかもしれないですね。

「最後、これ書いておいて下さい」

――「優しさ」が平本選手の人生のテーマですもんね。

平本選手 僕が人に優しくすることを心がけてるって言うと、「いやおまえTwitterでいろいろ悪口言ってるじゃねえか」って言われるんですけど、それを優しくないと履き違えてる中学生が多いなと思うんですよ。優しいってそういうことじゃないんだよって全中学生に言いたいですね。あ。中にはオッサンもいると思うんですけど(笑)。そういうヤツって中学から中身変わってないですからね。
ウーパールーパーって体が大人にならないんですよ。だからあの白いままなんですけど、たまに陸型というか脱皮して黒くなって体も大人になるタイプのウーパールーパーもいるんですよ。人間も同じで、ただ体が大きくなっただけで心が子供のままのヤツって永遠に子供じゃないですか、中学生から頭変わらないヤツって。でも変わるヤツっていくつになってもパッと変われるじゃないですか。まあ大半変わらないヤツばっかりなんですけど。

 

●朝倉未来選手と萩原京平選手

――ところで現在の格闘技ってPRIDEとK-1時代と違ってYouTube、ツイッター、インスタ、TIKTOKを見て「格闘技を知らないけど誰誰のファンです」と言う人も増えました。格闘家がメッセージを発信したり企画しています。

平本選手 でもブランディングというか、どこのファンに何を見せたいかわかってないですよね。僕は自分のファンにこういうものを見せたいなとかテーマを持って自分の発言とか行動をしてるんですけど、わかってないヤツらってとりあえず自分の知名度を上げることしか考えてないから、深さを届けようとしないんですよね。
広がるようにだけで動画を作ってるから、『ぼったくりバーに潜入!』みたいなタイトルにして人を呼ぼうとする んですけど、そこでやり取りしている自分を見せてどこの誰に自分のそこをカッコいいと思わせる必要があるんだと思うんですよ、マジで。
そんなのは僕に必要ないし、僕は自分のファンに何を伝えるのかっていうことを考えてます。それがわかっていない選手がほとんどですよ。盛り上げるとか言っておきながら、じゃあ自分は何をしてるんだって話なんですよ。試合頑張るって、そりゃみんな頑張るんですよ。例えば日頃の発言とか、今みんな出来る時代じゃないですか。声をあげる選手がもっといたら面白いけど、あげる選手ってあんまりいないんですよ。日本人って同調圧力がすごいから、自分が思っている正義が強すぎて、「何でちゃんとしてねえんだよ」とか、自分がやってることがちゃんとしてることだって勘違いしてるんですよ。

――そういう動画で火傷しないかと心配しています(※因みに奇しくも、このインタビュー直後、週刊文春オンライン2020年2月10日の記事で元K-1王者・安保瑠輝也選手のYouTubeでの金銭トラブルが報じられる。安保選手は謝罪動画をアップした)。

平本選手 そういうヤツって空っぽなんですよ、生きる理念を持ってないというか、哲学がないからどうでもいいんですよ。だからまともっぽい服を着て、まともっぽい音楽を聴いて、まともっぽいものを見て、何でもまともになろうとするじゃないですかそういうのも含めて自分でぶっ壊して、こういう存在がいるんだよっていうのを格闘技界じゃなくて日本全体っていうか世界に発信していきたいと思うんですけど、自分みたいなヤツがこんなふうに言ってこんなふうに戦ってこんなふうに勝つっていうのを見せられれば格闘技界は変わると思うんで。脳と心臓が動いてるだけで生きてるようで死んでるようなヤツっていっぱいいるじゃないですか。そういうヤツらに、「おまえも早く気づけ」って、自分の試合を見せて気づかせたいんです。

――平本選手は、1年間試合をしていないのにこれだけ話題になっているのは驚きです。

平本選手 僕のファンはすごく深いというか、ホントに僕を好きでいてくれてるって感じるので、それがすごく嬉しいし。負けてあのまま消えれば、多分めちゃくちゃ楽だったんです。でもそこで立ち向かってこそ人生だと思って、逃げなかったし。だから次の試合でこんなに変わったっていうのを見せて、アンチの奴にも「俺も明日から何か始めようかな」って思うきっかけになりたいすね。

――それでも、今までそういう試合をやってこられたと思ってます。競技は違えど、10代でゴンナパーとゲーオ(ウィラサクレック。当時日本人で彼を倒した選手はいなかった)を倒すってヤバいですよ。

平本選手 そう言えばゴンナパーとやる前に休憩が入ったんですけど、(ゲスト解説の)関根勤が関係者に 「次、平本くん公開処刑でしょ」って言ってたんですよ。俺はこいつ一生嫌いでいようと思ってホントにムカついたんですよ(苦笑)。で、入場のときに声援を聞いて、初めて応援の大切さが身に沁みたんですよね。声援が聞こえた瞬間そんな気持ちがブチ飛んで、「試合、やろう」ってなりました。
K-1ルールだから死にはしないかもしれないですけど、それでも江戸時代に強い侍がいていきなり刀で殺し合いが始まる時ってたぶんこういう感じなんだろうなっていう、ホント勝負するって気持ちになったんですよ。

――そこまでの恐怖を10代で克服してきてたんですよね。

平本選手 で、ああいう結果(※KO勝利)が出せたんですけど。ああいうふうに無理だ無理だって言われても覆してきた自分が、「おまえなら出来る」って今の自分の後押しをしてくれている感じがあります。

――僕はUFCだとヴァレンティーナ・シェフチェンコ選手が好きでして。というのはキックボクサー出身はMMAで大成しないと誰かが言っていたのでーーミルコ・クロコップ選手とかアリスター・オーフレイム選手とかいましすし―ームエタイファンとしては一概に彼女の例を見てもそうは言えないんじゃないのと思っているんです。平本選手も立ち技出身のMMAファイターとしてどんな感じの進化をしたのかをファンが観たいと思うんですよね。

平本選手 自分の武器ももちろんあるから、楽しみにしててください。完全に別人です。

――ホントに3月6日の試合、楽しみです(と一旦レコーダーを停めると平本選手から「あ。一言」というリクエストが)。

平本選手 これ、書いてもらっていいですか?

――お願いします。

平本選手 朝倉未来(総合格闘家・YouTuber。同じフェザー級戦線のトップファイター)は俺に「試合負ける」「まだ弱い」とか言ってみたりしておいて「いや強くなっているかも」とか「平本はいずれ強くなる」とかずっと俺に保険掛けてるんですよ。「やっぱ未来は当たってた!」みたいなのを待ってるから。自分の発言に保険掛けてんじゃねえよって思います(笑)。
萩原京平(総合格闘家・デビュー戦で平本選手に勝利)に関しては「次の俺の試合見せたら萩原は恐怖で絶対俺との対戦を避けるから、萩原に勝つであろうドミネーターとやれればいいかな」って付け足してください。

―ー有難うございました!(笑)
(インタビュー@久田将義 Photo@インベカオリ)