総合格闘家・平本蓮選手ロングインタビュー 「人に優しく生きようと思っている」 新生K—1の申し子から「格闘技の申し子」へ

――ところで入場・試合・マイク・記者会見まで客を引き付けるのがプロの選手であり、アマチュアとの一番の違いだと思っています。で、平本選手のK-1とBELLATOR JAPANのときの入場シーンを見直してみました。THE BLUE HEARTSで入場しているYouTubeを見たのですが、コメントは「やっぱ平本はブルハだよな」って結構あるんですね。卑近な例で申し訳ないのですが、僕は暴力について考察した本を出版した事があるのですけど、結局「いざとなると1人で動く人間が強い」。そして「強い人は優しい」という結論に至っていまして、実際会ってみて「強い」と思ってる人はだいたい「優しい人」なんですよ。そういう事って考えたことはありませんか?

平本選手 それは自分のテーマですね。この1年、人に優しく生きようってすごい思ったんですよ。人に優しく出来ないイライラした性格のヤツって可哀そうだなと思うんですよ。優しい接し方とか誰も教えてくれないんだろうし、そういう考えしか出来ないヤツって哀れだなって思うんですよ。

「人に優しくは自分のテーマですね」

例えば自分が人に優しくして、その人に優しくされなかったとしても、こいつに優しく出来て、自分を誇りに思えるじゃないですか。それはすごく「気持ちいいな」と思うんですよ。押しつけがましい優しさじゃなくて何気ない優しさですよ。
そういうことを思いながらアメリカに行ったらデカい人がいっぱいいて、ヘビー級並みの強そうな人がゴロゴロいるんですよ。自分が見てきた世界ってホントちっちゃいなと思ったんですよ。
あと、僕が住んでたところは治安が悪かったんでけっこうスリルがあったんですよ。夕方以降はこの辺りは歩くなってトレーナーに言われて、送り迎えしてくれた友達がいたんですけど夜中に銃声で目覚めて(苦笑)。
家の真下で銃声が聞こえるんですよ、それも毎晩。これ本当の話ですけど、夜中、バルコニーでNetflix観てたら薬物中毒みたいな人が、家の門の目の前で叫んでるんですよ。門から先には入ってこないんですけど、気味悪いじゃないですか、めちゃくちゃ近くにいるんで。だから僕、幽霊の振りしようと思って(笑)。

―ーえ? 幽霊?(笑)

平本選手 ジャングルで動物と会ったときみたいな感じですよ(笑)。何言われてもそいつのほう振り向かずにこうやってたら(※ダランと弛緩する動作。ゾンビみたいな感じ)、そいつがだんだん勘ぐってきて、バーッて走ってどっか行ったんですよ。そういう経験もすべて楽しくて。だから帰ってきて余裕が出来たのかもしれないです。

 

■今回は自分の力を証明する試合だなと思ってます。

――試合ですが、今はCAVEで練習されています。個人的に石渡伸太郎さん(元総合格闘家)は選手としての実績も凄いし、引退されてからの解説もわかりやすくて、クレバーな方だと思っています。YouTubeも面白いですし。今の環境はどうですか?

平本選手 お互い思ってる事なんですけど、石渡さんとはめちゃくちゃ相性良いって実感してるんですよ。アメリカで出来た宿題を、石渡さんが細かく説明してくれるんで、体の使い方がしっかりしてる人だし練習のリズムがいいんですよ。いい練習したっていう充実感も凄いし、いいトレーニングができてます。

――そう言えば三日月蹴りしてる動画を観ました。

平本選手 ハハハハハハ! 新作撮ったんで観てください。

――今度対戦する鈴木千裕選手はぶん回し系じゃないですか。僕はゴンナパー・ウィラサクレック戦もゲーオ・ウィラサクレック戦も佐々木大蔵戦も他の試合も観てますけど、平本さんて打ち合いにめちゃめちゃ強いじゃないですか。で、その選手と今回はどんな展開なるか、想像が膨らみます。

平本選手 総合デビュー戦のときは打撃で倒すしかなかったんで一発狙いのところがあって、距離を作ってカウンターを狙うしかなかったんですけど、僕の本来の強さって近い距離での打ち合いなんですよね。
僕はもらわないし、もらっても打たれ強さが僕の売りなんで。鈴木のパンチが一発当たるスピードで僕は三発打てるので。でも、それって組みが強くないと近い距離での殴り合いが使えないっていうのが難点だったからデビュー戦では出せなかったんですけど、いま僕は組んでも強いから楽しみにしています。
向こうはいきなり打撃で来るのかな、来ないのかな。まあ、どう来てもいいんですけど、僕がそれに合わせてカウンターを狙うことになると思うし、当然組みを混ぜながら来ると思うんですけど、あの局面になっても、この局面になってもっていうのをすげえ準備してるので、今回は自分の実力を試す試合ですね、ぶちのめすとかじゃなくて。自分を証明する試合だなと思ってます。