村西とおる監督を描いた『全裸監督』がNetflixでドラマ化 著者の本橋信宏氏と対談|平野悠
作家は孤独
本橋信宏(以下本橋):平野さんは対談前にものすごく相手を調べて来ますよね。わたしもインタビュアーは長年やってるけど、平野さんの書き込みだらけのノートを見て感動しました。平野さんって、イメージ的に、「オラァ、ロックだぜ! 人生アドリブだぜ!」みたいな雰囲気だけど全然違う。
平野悠(ロフトプラスワン席亭 以下平野):この手はロフトプラスワンで覚えたんだよ。オープン当初は俺が必ず前説をやってたじゃない? そのときにね、こうしてビッシリ調べて書いていると、次は何を質問されるんだろうって、相手がドキドキして真面目になってくれるわけ(笑)。
本橋:荒くれのロックな人かと思うと、違うからびっくりしますよ。
平野:インタビュアーが殴られたらおしまいだから、どこかでつっぱってないと。たぶん作家っていうのは、孤独な作業だからこういうの喜んでくれるかなと。
本橋:そうそう、ずーっと部屋でこもって書いているから、人恋しくなっちゃってね。考えてみれば、一週間で女と喋ったのはかみさんくらいだな……なんて。
平野:アハハハ! やだねぇ、かわいそうだね作家なんて!(笑) 俺と本橋さんはひとまわり以上違うんだよな。
本橋:「しらけ世代」なんて呼ばれてましたね。昭和31年生まれは。でもわたしたちの世代は自分たちを「しらけ世代」なんて誰も言ったことがないんですよね。ただ、大学教授の鹿島茂さんに以前、文庫の解説を書いていただいたときに、「1975年当時、本橋が大学に入学したころは、学内にはしらけた風が吹いていた」という記述があって、ああ、客観的にはたしかにしらけた空気があったんだなと思いました。
平野:俺たちはもう青春真っ只中に学生運動だったからね。最後は労働戦線にずっといたんですけど、俺は最後こわくなって逃げたの(笑)。だって、武器を運ぶ係にされそうだったんだよ! 危ないよ、そんなの(笑)。…あれ、今日はこんなことを話したいんじゃないんだよ、エロとロフトプラスワンの話しをしたいんだよ。