「私を見つけて!」 横山ゆかりちゃん失踪事件 未解決にしてはいけない(最終回)

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前回まで

「サングラスのおじちゃん…」 横山ゆかりちゃん失踪事件を未解決にしてはいけない!(1)

「少女たち受難の季節」 横山ゆかりちゃん失踪事件を未解決にしてはいけない!(2)

 ゆかりちゃんが行方不明になった時、店内には少なくとも数十人いた。外の国道も交通量がかなり多く、必ず車が通っていた。

001.jpg現場となったパチンコ店(現在は店名が変わっています)

 周りは密集した住宅街だった。なのに目撃者はいなかった。
 あえて言い換えれば、このエリアでは誰も他人のことにいちいち気を配っていなかったのだ。小さな子どもが誰かに連れ去られても気にならない状況だったのだ。
 太田市は田舎町ではなかった。田舎町であれば、見知らぬ男がやってきて子供を連れて行こうとすれば、誰かが気づく可能性が高い。
 むしろ、極めて都会的な要素の濃い街だった。人の出入りが激しく、隣人にどんな人が住んでいるのかわからない。そんな街だったのである。
 太田市は「匿名性」の高い街だったのである。そこでは人は誰でもすぐに「透明」な存在となれた。

002.jpgパチンコ店の裏の駐車場。ここで犯人は車を停めていたのだろうか

 いったい、なぜそうなってしまったのだろう。
 その原因の一つには好景気があるかも知れない。太田市の1998年の製造出荷額(工業生産高)は1兆4928円億円をほこり、群馬県内では2位の高崎市の2倍を超えるダントツのトップを誇っている。しかも驚いたことに1988年の1兆1635億円からほぼ微増傾向を続けているのだ(註・2000年当時調べ)。
 太田市内は、ほとんど平成不況の影響は受けていなかった。安定的に好景気の続いている街だったのだ。

 その好景気の陰で事件は発生した。
 景気がいい街は人の出入りが激しくなる。工場で働く人の数が増えると、あちこちに新興の住宅地が造築されていく。そんな地域のど真ん中に問題のパチンコ店はあった。
 また、工業間、都市間を移動する車の量も増えた。太田市は、群馬、栃木、埼玉、茨城の4県の県境近くに位置しており、重要な交通網が数多く交わる交通の要衝でもあった。