「東京一危険な男」に狙われた! 「彼」は迷惑系の走りだった あの時代YouTubeがあったら……|久田将義
「おい、お前いい加減にしとけよ。俺はアタマ悪いけどよ、よく考えたけど、てめえ俺のことナメてるよなぁ、いや、ナメてんだよ。二度と電話してくんじゃねえぞ。二度とじゃねえ、一生だ」
と一方的に切りました。歌舞伎町では、この程度の怒鳴り声は珍しくありません。僕がまくし立てている間、Kは珍しくなだめるような口調で仕事くださいとか、金がないので何とかしてくださいと言っていた気もします。
そして、時を経て八年後。再び、Kから連絡があるとは思ってもみませんでした。僕はワニマガジンからミリオン出版に在籍しており、Kという名をすっかり忘れていました。
ある日、出社すると机にメモがおいてありました。「Kさんという方が連絡が欲しいそうです」。ライターでKさんっていたかなぁ。記憶の糸をたぐり寄せます。あ、KってあのKか。思い出しました。念のため、前の会社の後輩に確認。すると、子供というか女の子のような声だったと言います。アイツです……。
僕は会社内では怒鳴ったり、大きな声を出さないことを信条にしており、守ってきたつもりなのですが、この場合だけ例外を意識的に作ることにしました。Kの連絡先に電話をかけます。あの独特の女の子みたいな声で答えてきました。
「はい」
Kです。間違いありません。
社内であるし、ここで大声を出した場合、お客さんがいたらびっくりしてしまいます。「『実話ナックルズ』の編集長(当時の僕はこんな職でした)ってアウトロー雑誌だけあって、やっぱりって感じ」などと噂されるのも本望ではありませんが、Kはカマしておかないとつけ上がってくるでしょう。
周囲には人はいないことを確認します。
僕「お前、Kだろ。もうかけてくんなって言わなかったっけ。何すっとぼけてんだよ」
K「え? …んなこと聞いてねえよ」
いきなり強気に出られたので、当初は多少うろたえ気味のK。立ち直って反撃してきました。後ら調べたから『Kから受けた被害者の掲示板』というようなものがあり、Kはしつこく劇団関係者に電話し、相手が断ったりすると「暴走族呼ぶぞ」とか「今からヤクザを行かせるぞ」という脅し方をすると書いてあったのです。
劇団のような平和的な人達に脅しをかけるとは。女性や萩野アンナさんの母上のようなご老人にまで恐怖を与えるのは僕の基準では許しがたいことでした。とりあえずKに僕のような人間も編集者にはいるという事を教えてあげなければと思いました。