「拳で稼ぐ。僕の格闘家としての美学です」 総合格闘家・『拳聖』平本蓮
それで言うとYA-MANと怪物くん(鈴木博昭選手)の試合しかり。ストライカー同士の試合でグラップリングでやる時点で負けなんですよね。怪物くんテイクダウン行っていたじゃないですか。俺もYA-MANとやるとき、テイクダウンに行く練習なんてしなかったんですよ。あくまで打撃で打ち勝ってからその先にテイクダウンするっていうか上を取る。これがストライカーの本来あるべき姿だと思うんですけど、ストライカー同士の対決で最初からテイクダウンを選択したほうが絶対に弱いんですよ。
――以前、朝倉選手にインタビューしたとき、「一番キーになった試合だった」のはRIZINデビュー戦の日沖戦って答えていました。平本さんがおっしゃったように野性味があったと思うんですよ。前に詰めてって最後プレッシャーかけて。
平本選手 (最後は)左ハイキックか何かですよね。最初、朝倉未来がポンポンKOで倒していた時期の映像を観るとめっちゃ打撃ヘタなんですよ。不格好というか。僕はシャープな打撃が好きなんですけど、朝倉未来は汚い打撃で(笑)。でもあ・れ・が強いんですよ。
――あの打撃はMMAファイター同士だから通じた、と。
平本選手 これが上のレベルになってくると、あんなの餌食っすよ。
――今回、露呈してしまった?
平本選手 アレが良さだったんじゃないかな。YouTuberになっていろんなキックボクサーと絡み始めてから急にきれいに戦うようになったりして、あの荒々しくて強い感じがなくなった。
――平本選手は幼少の頃からずっと格闘技やっていて、いわゆる天心選手らと過ごしてきた「格闘エリート」です。それを分かっているのか、いないのか。よく「SNSの口撃だけ」みたいなこと言われますけど、平本選手はホントに純粋に格闘技に人生を捧げていて、格闘技が好きなことが伝わってきますけどね。
平本選手 ネットの口撃とか僕は顔出して言っていますからね。ネットの陰口じゃなくて、俺として公言していますからね。おまえら俺と同じ立場だと思ってんのかよって感じですけど。勘違いも甚だしい(笑)。たかがパンピーのツイートと俺のツイート一緒にしてんじゃねえよって思いますよ。いいですよ、そういう奴に試合見てもらわなくても(笑)。
●「朝倉未来戦に勝ってから全員に優しくなれました。鈴木千裕以外(笑)」
――今回の朝倉戦は『THE MATCH』と並ぶ頂上決戦という意味でひとつ区切りがついたと思うのですけど、もしかしたらここで少しJMMA熱が下がるのかな、みたいなことは考えてたりするんですか?
平本選手 天心と武尊みたいな接戦だと、「世紀の一戦が終わった」みたいになっちゃいますよね。僕はこの試合、絶対に最高のフィニッシュ、圧倒的な勝利をしたかったんです。そしたらただの俺の圧勝で終わったじゃないですか。
――そうでした。
平本選手 だからあんまり世紀の一戦という感覚もなく、もう次に上がるっていう感じっすね。
――あの一方的な、一発も貰わないで……初めのストレートで終わっていましたよね。
平本選手 そうですね、効いたんでチャンスだと思って。
――最後に朝倉選手がダメ元で右フック出すじゃないですか。それに合わせますよね、それで決まったって解説が言っていたんですけど、その前に終わっていましたよね。
平本選手 そうですね。あれで効いてクリンチに来たところに5~6発入れて。最後のカウンターとかじゃないですね。
――テイクは1回も来なかったです。
平本選手 来させないように距離感の設定でしたから。みんな、何で行かないんだって言ってましたけど、行けるなら来てましたからね、絶対にさせないような距離感だったんです。
――朝倉選手は予想以上にプレッシャーかかっていたんですね。
平本選手 プレッシャーかけられた自信はあります。
――左ストレートのときのステップって、あれ右のスイッチのフェイント、入れてます?
平本選手 入れてないです。
――何パターンかできるってことですね。
平本選手 はい、そのなかのひとつです。
――すごい武器を手に入れましたね。
平本選手 そうですね、ホントに練習しました。
――専門家たちの勝利予想で「3勝3敗」ってずっと言っているのですけど、その前に新生K-1で修羅場くぐっているじゃないですか。まして、ゲーオ、ゴンナパー戦を「江戸時代の決闘場に行くぐらいのつもりだった」と表現していた。それを19歳とか20歳で経験していることはデカいと思うんですよ。この修羅場をくぐった体験をなぜ専門家は無視するのか――。
平本選手 圧倒的にデカいし、アマチュアでもたくさん試合してきて、その基盤があるので、今のMMAの感覚は総合格闘家としてかなりつかんだんじゃないかなっていう感じで。デビュー当初から茨の道ではあったかもしれないですけど。文句言うヤツはいっぱいいますけどね、じゃあ同じことやってみろよって。
――そうですね、そこを無視して「3勝3敗」にこだわっているから。
平本選手 それはシンプルにヤキモチですよ。そういうのも朝倉未来に勝ってから全員に優しくできるようになりました。