赤い樵 「樹齢60年ほどの銀杏の大木を伐採してから起きた恐怖体験」|川奈まり子の奇譚蒐集二八

「でも、お互いに赤の他人ですよね? 恋人でもない異性を家にあがらせて子どもの面倒をみさせるというのは、普通なかなか、しませんよね?」

すると政宗さんは、怒りもせずに、こんなことを話してくれた。

「彼女は、僕の弟の下に生まれるはずだった子どもの生まれ変わりだと思えたんですよ。人は生まれ変わるか鴉になるのだと僕は信じていて、彼女は水子の生まれ変わりなんじゃないかと、ごく初期から思っていたんですが、何度も会ううちに確信に変わりました。母が弟の下の子を堕ろしたことを知っていましたからね。きょうだいに巡り合ったんだと信じています。肉親なら、助けるのは当たり前のことです」

結果的に、政宗さんは母子を救った。お告げに従っただけではなく、堕胎された肉親の水子の生まれ変わりだと信じることで、純粋な気持ちで力を尽くしたわけである。

拝み屋のおばあさんのお告げは的中して、彼は事業に成功し、裕福に暮らしている。9歳の息子を可愛がっているが、その子は「父の生まれ変わりだと思う」と言っていた。

南青山の我が家から代々木公園は徒歩圏内だ。さっそく、お話に出てきた《十四烈士自刃之處》を見てきた。

事前に、東京都公園協会のサイト(https://www.tokyo-park.or.j)で代々木公園のページを調べたところ、「十四烈士の碑」として、園内マップに位置が表示されていた。