赤い樵 「樹齢60年ほどの銀杏の大木を伐採してから起きた恐怖体験」|川奈まり子の奇譚蒐集二八

十四烈士自刃之碑は、ワシントンハイツが日本に返還されるより5年ほど早く、昭和34年に米軍の許可を得て建てられた。

その際に、石碑の下に、自刃直後に大東塾関係者と地元町内会の有志が採取して保管しておいた「血染の砂」納められたのだという。

そのときにはすでに、あの銀杏の木があったのではないか?

14人が割腹自殺して流れた大量の血を吸った土。そこに根を張って生長した大木を、政宗さんは伐ってしまったのでは……。

そう考えると、なんだか私までお腹のあたりにどんよりした違和感を覚えて、食欲が失せてくるのはどうしたわけか。

木が、人間ならば腹にあたるところで伐られて根を失ったから自分の腹がおかしくなったのだというようなことも政宗さんはおっしゃっていたけれど、集団で切腹した場所に原因があるという可能性も……。

それにしても、では、赤い樵は何なのか?

土地神だろうか。それとも……。などと考えても埒が明かないと思われるので、この稿はここまで。(川奈まり子の奇譚蒐集・連載【二八】)

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