虫の知らせ　「今日は何か変だ…帰った方がよさそうな気がする」｜川奈まり子の奇譚蒐集二三

2019年2月9日

当時、実家住まいをしていた今野さんの唯一の趣味はオートバイ。大型自動二輪の限定解除試験に合格し、2009年に発売された1679ccのヤマハⅤMAXを手に入れたばかりの頃だった。

海外を主戦場とするプレミアム・アメリカンバイクで、正価で新車を購入すると200万円以上する。200馬力のエンジンをオールアルミフレームに搭載した大型のネイキッドモデルで、街中では滅多に見かけることのない、自慢の愛車だ。

2012年11月24日は土曜日で、前の日は祝日（勤労感謝の日）。休みの度にVMAXに乗っている今野さんだったが、23日は朝から午後3時頃まで雨が降っていたため、乗りそびれた。そこで、寝るときから「明日は乗るぞ」と頭の中をバイク一色にして床に就いたのだった。

ところが、翌朝、なぜかVMAXのエンジンがかからない。

もちろん手入れは怠っていない。おかしいな、と思いながら点検し、あれこれ試してみたところ、昼前に回復して、エンジンがかかるようになった。

しかし原因が判然としないエンジン不調だったから、直っても、なんだか胸がモヤモヤした。