虫の知らせ 「今日は何か変だ…帰った方がよさそうな気がする」|川奈まり子の奇譚蒐集二三

――今日は乗らない方がいいのではないか?

理由は無いが、そんな気がした。
今日は曇りで、雨は降らなさそうだか、空も何だかどんよりしている。
少し迷ったが、ちょっと飛ばしたら爽快な気分になるだろうと思い直して出発した。

最初は、府道に出て、府道を北へ直進するつもりだった。
ところが、なんとなく府道の交差点を通過してしまい、その先の国道から高速道路に入ってしまった。
そのとき再び、厭なモヤモヤ感が胸の内で膨らんだ。

――今日は何か変だ。すぐに帰った方がよさそうな気がする。

けれども悪い予感がするだけで、何の理由も思い浮かばないのだ。
環状線を一周して元の国道まで戻ってくるまでの間に、モヤモヤが薄れた。
そこでまた急に思いついて、そこからほど近い港の方へ向かうことにした。